印鑑の届出

会社届出印会社・法人の代表者(代表取締役・代表社員・代表理事など)は、本店(主たる事務所)の所在地を管轄する法務局に対して、印鑑を届け出なければなりません(商業登記法第20条)。

この法務局に印鑑を届出した会社・法人の代表者の印章のことを、会社届出印、会社実印、代表者印などといい、会社・法人の登記申請の際には、申請書(委任による代理人が申請する場合には委任状)に押印することになります。

また、法務局に会社・法人の代表者の印鑑を届出することによって、その印鑑及び印鑑届出事項が登録され、印鑑証明書を発行してもらうことができるようになります。

印鑑届出の趣旨

印鑑届出の制度は、会社・法人に関する登記の申請権限を持つその会社・法人の代表者が、あらかじめまたは登記申請と同時に法務局に印鑑を届出しておくことで、法務局においてその会社・法人に関する登記申請がされたときに、登録された印鑑(印影)と登記申請書または委任状に押印された印鑑(印影)とを照合して、申請権限のある者からの申請であることを確認できるようにするためのものです。

したがって、登記申請において、申請書または委任状に届出印が押されていない場合は、その申請は却下事由(商業登記法第24条第1項第7号)に該当し、登記官から補正するよういわれることになります。

印鑑届出の方法

会社・法人届出印の制限

会社・法人届出印は、その印鑑の大きさが、1辺が1cmの正方形に収まらず、3cmの正方形に収まるもので、照合に適するもの(印鑑が単純すぎたり複雑すぎるものは認められないおそれがあります。)でなければなりません(商業登記規則第9条第3項、第4項)。

一般的には、直径が18mmまたは21mmの丸印で、二重丸のようになっていて、外側に会社名が彫ってあり、内側に「代表取締役之印」「代表社員之印」「代表理事之印」「代表者印」などと彫られている印章が届出印にされていますが、上記要件さえ満たす印鑑であれば届出することができます。

このため、例えば、会社設立において、設立登記の申請時にまだ会社名等が彫られた印章が作製できていない場合は、ひとまず代表者個人の実印などを会社届出印として印鑑届出及び登記申請をし、設立後に一般的な会社届出印に改印をするというようなこともできます。

印鑑(改印)届書の提出

会社・法人の印鑑届出は、商号・名称、本店・主たる事務所、代表者の資格・氏名・生年月日等の印鑑届出事項を記載した印鑑(改印)届書を、本店・主たる事務所の所在地を管轄する法務局に提出する方法で行います。

なお、支店の登記がある場合であっても、支店の所在地を管轄する法務局には印鑑届出をする必要はございません。

また、印鑑(改印)届書には、原則として、代表者個人の実印を押印して、その実印の印鑑証明書(発行から3か月以内)を添付する必要があります

印鑑届出をするときの注意点

1.1つの会社・法人に複数の代表者がいるときは、必ずしも全員が印鑑届出をする必要はなく、代表者のうちの1人が印鑑届出をすれば足ります。

2.複数の代表者が印鑑届出をする場合は、複数の代表者が同一の印鑑を届出することはできず、それぞれ別の印鑑を届出しなければなりません(昭43.1.19民事甲第207号回答)。

3.印鑑(改印)届書に添付する代表者個人の印鑑証明書は、原本証明をしたコピーを提出することで、原本を返却してもらうことができます。

また、登記申請と同時に印鑑届出をする場合で、登記申請書の添付書類に印鑑届出をする代表者個人の印鑑証明書が含まれているときには、印鑑届書用にもう1通用意しなくても、申請書に添付した印鑑証明書を、印鑑(改印)届書の添付書類として援用することもできます。

4.持分会社で代表社員等が会社・法人の場合には、代表社員等である会社・法人において職務執行者を選任し、その職務執行者が以下の方法により印鑑届出をします。

◇印鑑届出事項
持分会社の商号及び本店のほか、代表社員等の資格、商号・名称、本店・主たる事務所、職務執行者の氏名及び生年月日が印鑑届出事項となります(商業登記規則第9条第1項第4号)

◇添付書類
◎職務執行者が代表社員等である会社・法人の代表者であるとき
・当該会社・法人の代表者の資格証明書
・印鑑(改印)届書には、当該会社・法人の届出印を押印
・当該会社・法人の届出印の印鑑証明書

◎職務執行者が代表社員等である会社・法人の代表者でないとき
・印鑑(改印)届書には、職務執行者個人の印(認印可)で押印
・届出する印鑑につき当該会社・法人の代表者が職務執行者の印鑑に相違ないことを保証した書面(この保証書には当該会社・法人の届出印による押印が必要)
・当該会社・法人の届出印の印鑑証明書

※代表者の資格証明書及び印鑑証明書は、いずれも作成後3か月以内のものである必要があります。なお、印鑑届出をする法務局と代表社員等である会社・法人の管轄法務局が同じであるときは、代表者の資格証明書及び印鑑証明書は添付を省略することができます(代表者の資格証明書については、管轄の法務局が異なる場合であっても、印鑑(改印)届書に、代表社員である会社・法人の会社法人等番号を記載することで添付を省略することが可能です。)。

持分会社の代表者が法人の場合の
法務局の印鑑届書等記載例(PDF)

印鑑カードの交付

法務局に会社・法人の代表者の印鑑届出をした者は、手数料(書面請求の場合、1通につき450円)を納付して、印鑑証明書の交付を受けることができますが、この際「印鑑カード」の提示が求められますので、あらかじめ「印鑑カード」の交付を受ける必要があります。

印鑑カードは、印鑑カード交付申請書に所定事項を記載し、会社・法人の届出印を押印したものを管轄法務局の窓口に提出することで、交付されます。

なお、印鑑カードが交付後に印鑑証明書を請求する場合は、管轄法務局はもちろんのこと、それ以外の法務局であっても請求することもできます。