会社設立や募集株式の発行による資本金額の増加(増資)の場面においては、現物出資を除き、出資金についての払込みが行われることになります。
この出資金の払込みは、通常、株式会社設立(発起設立)のときは発起人名義の預貯金口座、募集株式の発行による増資のときは増資をする会社名義の預貯金口座に対して行われ、これらの手続きの登記申請の際には、それぞれ払込みが行われた口座の通帳のコピー(インターネットネットバンキング等の通帳がない口座の場合は、取引明細の画面を印刷したもの)をとって、出資金の払込みがあったことを証する書面(払込証明書)を作成し、提出します。
このページでは、会社設立や増資の登記申請の際に添付書類となる「払込みがあったことを証する書面(払込証明書)」について、その一般的な作成方法や注意するポイントをご説明します。
払込証明書の作り方
■1.証明書部分の作成
払込証明書の表紙となる証明書部分をワード等で作成します。
記載例は以下のとおりです。
なお、払込証明書に記載する日付は、当然ですが、通帳等に記載された出資金の払込日以降の日(同日可)となります。
また、株式会社設立のときは、この払込証明書は設立時代表取締役が作成名義人となりますので、これに記載する日付は、出資金の払込日以降の日であることに加えて、設立時代表取締役の就任日(就任承諾書の日付)以降の日(同日可)である必要もあります。
【株式会社設立のときの記載例】
証 明 書
当会社の設立時発行株式については以下のとおり、全額の払込みがあったことを証明します。 設立時発行株式数 100株 令和○○年○○月○○日 株式会社○○○
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【株式の発行による資本金額の増加のときの記載例】
証 明 書
当会社の募集株式については以下のとおり、全額の払込みがあったことを証明します。 払込みがあった募集株式数 500株 令和○○年○○月○○日 株式会社○○○
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■2.通帳のコピー
(1)通帳の表紙のコピー
出資金の払込みがされた預貯金口座についての通帳の表紙のコピーをとります。
画像は、通帳をひろげて裏表紙もいっしょにコピーをとったものとして作成していますが、銀行名と口座名義人名さえわかれば表の表紙だけのコピーでもかまいません。
また、表紙の代わりに、通帳の表紙をめくった1ページ目の銀行名と口座名義人等が記載されているページのコピーでも結構です。
(2)入金が記帳されているページのコピー
出資金の払込みによる入金が記帳されているページのコピーをとります。
払込みによる入金が記帳されている部分に、マーカーや下線等を引いておくと、わかりやすくてよいでしょう
なお、出資金の払込みは、例えば、会社設立の場合に発起人が1人で、その人が自分の口座に払い込むような場合であっても、口座に出資金額分の残高があるだけでは出資金の払込みとは認められません。
出資金の払込みとするためには、会社設立の場合であれば定款の作成日以降、募集株式の発行による増資の場合であれば募集事項を決定した株主総会または取締役会の開催日以降に、新たに払い込む必要があります。
したがって、会社設立の際に、発起人が、払込みを行う口座の預貯金を出資金としたい場合は、その口座から出資金額分の預貯金をいったん引き出して、あらためて引き出したお金をその口座に入金していただくことになります。
■3.証明書と通帳のコピーをとじる
上記1の証明書および上記2の通帳の表紙コピーと出資金の入金が記帳されているページのコピーとをあわせてホッチキスで留めれば完成です。
なお、以前は、払込証明書に会社届出印による押印や各ページの継ぎ目に割印(契印)が必要とされていましたが、令和3年1月29日民商第10号通達が発出され、現在ではこれらの押印が不要となりました。
出資金の払込み及び払込証明書のポイント
●出資金の払込先口座への払込方法は、「振込」「預入」「振替(同一銀行同一支店で名義人も同一の口座間での資金移動)」など、いずれの方法でもかまいません。
●出資金の払込みは、払い込むべき金額を何回かにわけて払い込むことも可能です。
●払い込むべき人が複数いる場合に、1人が全員分の出資金を預かって、まとめて1回で払込先口座に入金することもできます。
●出資金の払込先となる口座は、通帳がないインターネットの口座でもかまいません。この場合は、「銀行名」「口座名義人」「入金日」「入金額」が記載されているページをプリントアウトして、払込証明書を作成します。
●本ページで説明している通帳のコピー等から作成する払込証明書は、募集設立の方法による株式会社の設立では、登記申請の際の添付書類とすることはできません。募集設立による会社設立においては、登記申請の添付書類となる払込みがあったことを証する書面として、銀行等が発行する払込金保管証明書が必要となります(商業登記法第47条第2項第5号)。
●株式会社設立(発起設立)の場合においては、払込先となる口座は、発起人名義の他に設立時代表取締役名義のものでもかまいません。ただし、発起人ではない設立時代表取締役名義の口座のときは、発起人が、設立時代表取締役に対して出資金を受領する権限を委任した委任状も登記申請の際の必要書類となります。